終末時計100秒前

終末時計100秒前

2020年8月6日 朝日新聞朝刊 核といのちを考えるより

終末時計100秒前

1945年8月6日の広島が被爆してから75年目となる原爆の日を迎えた。毎年この時期になると新聞やニュースで平和祈念式典を目にし、戦争、原爆、核兵器、被爆者等と様々なことを考えさせられる。学生時代に平和学習でこれらについて学ぶ機会があったが、年齢を重ねる事に積極的に目を向けなければそのような機会はなくなってしまった。しかし日々生活を送っていくうちに意識が薄れていき、また再びこの時期に思い出し自分がのんきである事に気が付く。今私たちが平和に暮らせているのは誰のおかげだろうか。

終末時計という言葉をご存じだろうか。米化学誌「原子力科学者会報」が発表し、専門家による同誌の委員会が核兵器使用の危険性などを毎年検討し、地球滅亡を深夜0時に見立てて、時計の針の位置を決める。同誌は1945年、米国の原爆開発「マンハッタン計画」に関わった科学者でオッペンハイマー氏らの呼びかけで創刊された。

その終末時計が100秒前に迫ったというのだ。トランプ政権発足後の2018~2019年は2分前であった。しかし今年1月、トランプ政権のINF全廃条約失効などで100秒前まで変化した。日本は唯一の被爆国であるが、被爆者の平均年齢は83歳を超えたそうだ。私たち語り継がれる側が、より危機感を持ち風化させず核廃絶を継続して訴え続けなければいけない。しかし残念ながら日本政府は核廃絶に関して消極的であるようだ。世界で唯一の被爆者たちが、身をもって恐ろしさを伝えてくれているというのにどうしてなのか。

新型コロナウイルスという未知のウイルスに対する恐怖が、今もなお世界を恐怖に陥れ続けている。皆が同じ危機に晒され、それぞれが危機感を感じたはずだ。核兵器に対しても同じように捉えられれば意識も変わっていくのだろうなと感じた。日本だけが被爆国だからわかってもらえない、というスタンスでは終末時計が再び0秒になる日が訪れてしまうのではないだろうか。

 

朝日新聞札幌中央販売(株)

2020年8月入社:伊藤杏奈