甲子園が中止になっても…

甲子園が中止になっても…

2020年5月21日 朝日新聞朝刊 一面より

2020年5月20日午後4時すぎ、高野連は第102回全国高校野球選手権大会の中止を正式に発表した。選手の感染リスクだけではなく、休校による練習不足で選手のケガが予想されることも考慮しての判断であった。苦渋の決断であっただろう。だが、無観客でもいいから開催して欲しかった。選手のことを考えると言葉がでない。3年生にとってはこれが最後の夏であったのに…

この夏を迎えるまで、きっと選手1人1人にそれぞれ物語があったことだろう。1、2年生の頃はベンチに入れずスタンドで応援だったが、3年生で念願のベンチ入りを果たした選手。プロを目指し、甲子園での活躍を誓った選手。その物語の最終回がこの夏だった。最終回を迎えることなく終わってしまうなんて、あまりにも残酷ではないだろうか。

そして、この夏に向けて厳しい練習を積み重ねてきた選手たち。そこには多くのことがあったと思う。きっと涙もあったことだろう。この3年間はいったい何だったのか。そんな気持ちの選手もいるだろう。しかし、その3年間は決して無駄じゃない。仲間と切磋琢磨した日々。練習帰りにみんなで食べに行った牛丼。たとえ甲子園が中止になろうとも変わらないことがある。それは振り返ると3年間を共に歩んできた仲間がいることだ。どんな時でも励ましあい、共に成長し、大きな壁も乗り越えてきた仲間。

かつて甲子園で優勝投手となったハンカチ王子こと斎藤佑樹投手(現日本ハム)は、大学時代にこんなことを言っていた。「僕は何か持っていると言われてきたが、何を持っているか確信した。それは“仲間”です。」みんなもすでにこれを持っている。そしてそれは、どんなものよりも価値があるものだと思う。アニメで言えば、ワンピース(大秘宝)だ。

また、各都道府県の高野連に、地方大会を独自で行うかどうかの判断が任されているが、これはぜひ開催してもらいたい。選手たちは開催されることを信じて、しっかり準備を行い、それぞれの3年間を全てぶつけて欲しい。そして、悔いのない最高のフィナーレを迎えてもらいたい。

 

朝日新聞札幌中央販売(株)

2020年4月入社:秋山 大地