私が札幌市内の小学校を卒業したのは30年ほど前のことです。大通エリア(まち)のデパート で買ってもらったスーツに身を包み、恩師や両親に祝福され、送り出されました。 学舎や友だちとの別れを惜しんだ瞬間を、いまでも思い出します。 今年はそんな普段の光景を見ることができませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大により、 式典の時間は大幅に短縮され、保護者は出席できませんでした。日々のニュースを報じるなかで、 人生の節目をこんな形で迎えることになった小学生や保護者の皆さんのことを思うと、 本当につらくなります。 小学生時代、楽しみなテレビ番組の一つがお笑い時代劇バラエティ 「志村けんのバカ殿様」でした。志村さんが志村藩のバカ殿に扮し、城内や城下で起こるさまざま な出来事をコントにした番組です。 不定期の番組ですので、放送される時は、 妹と「共闘」して家族内の「チャンネル争い」を制したものです。両親に何か注意されると、 志村さんのギャグ「からすの勝手でしょ」を拝借してかわそうとして、 かえって両親の怒りの火に油を注いでいました。 その志村さんが3月29日、新型ウイルスの犠牲となり、70歳で亡くなりました。 亡くなる12日前に、倦怠感を感じ、その2日後には発熱や呼吸困難の症状が出て、 その後、一気に症状が悪化したということです。 志村さんは北海道にも ゆかりがあります。浅田次郎さん原作の映画「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)にも、 炭坑労働者の役で出演されていました。 映画やテレビの志村さんを思い出すと、何とも言えません。 北海道は一時、 全国最多の感染者数になりました。 いまは首都圏の感染拡大の方が目立つようになっていますが、油断は禁物です。 一人一人の行動が感染拡大を防ぐ。目に見えない敵と賢く闘う生活を心がけたいと思っています。 朝日新聞北海道報道センター次長 鯨岡仁
【写真説明】
卒業証書を受け取る卒業生=3月23日、札幌市東区の市立明園小、代表撮影