皆さんは「ナチュラルリュージュ」という競技種目があるのをご存じか。 リュージュといえば「りんごちゃん」の愛称で親しまれ、 1972年札幌五輪で5位入賞を果たした小林優子(旧制大高)さんが ウインタースポーツファンにはおなじみだが、小林さんのは鉄骨造で 専用に作られた人工走路を滑走するアーティフィシャル種目(AL)。 ナチュラル種目(NL)は林道やゲレンデの雪を固め、 水をまいた氷上コースでタイムを競うもので現在 、国内には競技者が2人しかいない。同種目の普及に奔走するのが、 北海道教大岩見沢1年の田中祥兵(38)と藤原香夏(19)だ。 田中は03年に22歳で脱サラしソリ競技を始め、ALでは17年 全日本選手権を制した実力者。NLの普及を目指し、37歳で同大に入学し 「競技を広め、岩見沢をソリの町にしたい」と強い決意で未開拓の 競技に挑んでいる。藤原は五輪種目であるスケルトンでは17、18年の ジュニア五輪優勝を果たしているが 「一緒なのはソリ競技というくくりだけで全然違う」。 速度は直線で時速70キロほどだが、 コーナリングなど高い操作性が求められるNLの難しさを語る。 岩見沢市とは冬季期間にいわみざわ公園内の土地利用で合意しており、 今年は積雪が少なく本格的なコース作りは断念したが、 2月にはソリ競技の体験会を実施した。 26年冬季五輪は競技が盛んなイタリアで開催地、札幌が立候補している 30年大会も見据えながら将来の五輪採用へ、開拓者としての2人の奮闘は続く。 コロナウイルスの感染拡大により、 東京五輪・パラリンピックの開催延期が決定した。20年に照準を合わせてきた アスリートにとっては、すでに代表が決定している、いないにかかわらず、 今後の練習環境や試合勘を落とさないための体力面、 メンタル面のコンディション作りが大切だ。決してマイナス思考にならず、 前向きにこの試練を乗り越え、 晴れの舞台で最高のパフォーマンスを見せてほしいと切に願う。 <日刊スポーツ長内 準>
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ナチュラルリュージュの五輪種目採用に向け、競技の普及に奔走する北海道教大岩見沢の田中(左)と藤原