四半世紀を経て、「モエレ沼」再訪

四半世紀を経て、「モエレ沼」再訪

札幌に今年4月、初めて赴任した。5年ぶりに取材の第一線に戻った私にとって、再出発の地だと感じている。このまちについて真っ先に思い浮かんだのは、彫刻家イサム・ノグチが基本設計を手がけた「モエレ沼公園(札幌市東区)」のことである。

ノグチは1904年、日本人の詩人の父とアメリカ人の教師の母との間に生まれた。米や仏などで彫刻家として活躍し、日本でも大阪万博の噴水などを制作した。

公園の公式サイトによると、「大地を彫刻する」という構想を温めてきたノグチは88年3月、初めて札幌を訪れ、不燃ごみの埋め立て地を公園にする計画を知る。「人間が傷つけた土地をアートで再生する」と、札幌市からの設計の依頼を引き受けた。短期間で基本設計を完成させたが、その年の12月、急病で亡くなった。

私がここを初めて訪れたのは、新聞記者になる半年ほど前の95年のこと。現代美術鑑賞が趣味で、「公園全体がひとつの彫刻作品」というノグチの構想がどんなものか、確かめたかったのだ。当時は遊具エリアの一部が公開されていただけだったが、99段の花崗岩の石段がある「プレイマウンテン(高さ30メートル)」は完成しつつあった。いつか全容を見たいと思った。

翌96年にプレイマウンテンなどが完成して一部開園し、ノグチの没後17年の2005年にグランドオープンした。だが、私は記者生活を通じて再訪を果たせないできた。

コロナ禍で一部閉鎖された公園を再訪できたのは今年5月5日。約190ヘクタールの敷地に、ノグチが生み出した巨大な造形物たちが配置されている。不燃ごみと建設残土を積み上げたモエレ山(標高62・4メートル)に登り、札幌のまちを一望した。

四半世紀を経て、再びノグチに導かれたような気がしている。このまちから、北海道の魅力を全国に発信していきたい。

 

朝日新聞北海道報道センター次長 野田一郎

(写真説明)

モエレ山はふもとからの高さが52メートルで、札幌市東区唯一の山。ノグチの生誕100年にあたる2004年に完成した